7/30(日) 3日目

<Bank Band>
『Reborn-Art Festival』のテーマ曲として書き下ろされた“What is Art? ”のミュージック・ビデオがビジョンに流れる中、Bank Bandのメンバーが続々とステージに集まり、最後に櫻井和寿が登場するというオープニング。一つひとつの音が生音に変わって行き、ライブの始まりを告げる。続いて、櫻井がこのイベントの開催をどれだけ待ち焦がれていたかを示すために準備したという、スピッツの“夏の魔物”のカバーを。「もっと来い!」と観客を煽り、その気持ちを言葉にした<会いたかった!>のフレーズをリフレインする。さらに、タイトル通り、これを聴かなきゃap bank fesが始まらない!といえる“奏逢~Bank Bandのテーマ~”も。「さあ、声を聞かせて!」と櫻井が呼びかけると、観客から<ラララ>の大合唱が起き、大きな一体感が生まれる。「雨も今のところ止んでるね。最高の一日にしたいと思います」(櫻井)。その言葉通り“最高の一日”へのスタートを切った。


M1:What is Art?
M2:夏の魔物
M3:奏逢 ~Bank Bandのテーマ~

<Bank Band with 竹原ピストル>
会場の大観衆と、Bank Bandのメンバーに恐縮するように、頭を何度も下げながらステージに現れた竹原ピストル。まずは「その歌聴いたことあるなってなったら嬉しい」と言い、曲名“よー、そこの若いの”を告げると、テレビCMで大量オンエア中の楽曲だけに、観客から大きな拍手が起こる。竹原はその拍手に緊張してしまうと言いながら、嬉しそうに歌いだす。サビでは拳をつきあげる観客と一緒に歌い、「カウント入れたらまんまと歌ってくれた(笑)」と、温かな反応を喜ぶ。続く、東北ツアー中に書いたという“RAIN”では櫻井を招いての共演。櫻井の顔をまともに見られないと言うほど緊張しながらも、サビを櫻井とのユニゾンで聴かせるなど、最高のコラボを披露した。そして、ラストはBank Bandのメンバーを下げ、たった一人でステージに立つ。弾き語りで、名曲“Amazing Grace”のメロディに、自からの思いを綴った歌詞を乗せた曲を熱唱。その迫力で観客を圧倒しながらも、最後はまた何度も観客に頭を下げながらステージをあとにした。

M1:よー、そこの若いの
M2:RAIN
M3:Amazing Grace

<Mrs. GREEN APPLE>
次にステージにあがったのは、今月でまだデビューから2年の5人組バンド、Mrs. GREEN APPLE。サウンドチェックのときから、「掛け合いを手伝ってもらってもいいですか?」とボーカル大森が客席に呼びかけ、準備運動代わりのコール&レスポンスで場を温める。そして本番1曲目“Speaking”で、<誰にも話す気はない? だけども話してよ 僕には教えてよ>と歌いかけ、オーディエンスの心をほぐしていく。続く“アンゼンパイ”でも、「ジャンプしましょう」と声をかけ、会場全体が一体になるよう導いた。会場を見渡しながら「本当に素敵な光景です」と、大森は何度も幸せを噛み締めた表情を見せる。ドラマ『僕たちがやりました』のオープニングテーマになっている新曲“WanteD! WanteD!”も披露し、最後はメジャーデビュー曲“StaRt”で締めくくった。弱冠20歳の大森元貴。そのフロントマンとしての立ち振る舞い、エンターテイナーとしてのお客さんの導き方、ポップでありながら捻くれた構成も混ぜ込んで耳に引っかかりを残す曲を作るソングライティング力は、ある意味、驚異的だ。この先、『ap bank fes』に出演し続けているJ-POPの最前線に立つ大先輩たちのような存在になっていく可能性を、はっきりと示したステージだった。

M1:Speaking
M2:アンゼンパイ
M3:WanteD! WanteD!
M4:どこかで日は昇る
M5:StaRt

<ペトロールズ>
Mrs. GREEN APPLEが、フレッシュな勢いとカラフルなサウンドで魅せたあとは、ペトロールズが、大人な凛々しい姿とミニマルなアンサンブルで会場を魅了する。ギター・長岡亮介とBank Bandの関係性と言えば、直近では、昨年末の『紅白歌合戦』で、椎名林檎のバックバンドとして亀田誠治とともに東京都庁前で演奏し、お茶の間に大きなインパクトを与えたことを特筆すべきだろう。今日も、“雨”“Fuel”を含む5曲で、長岡は色気の溢れ出るギタープレイを響かせた。3人のアンサンブルは、ミニマルかつシンプルではあるけれど、その音の重なり方はまったく普遍的ではなく、だからこそ、ライブを見るたびに曲の表情は変わっていく。ペトロールズが2年前にリリースした、結成10年にして初のファーストアルバムのタイトルは、「文芸復興」を意味する『Renaissance』だった。音楽やアートを含む「芸術」の多様性を提示し、新たな「出会い」を生み出す『Reborn-Art Festival』に、「産業音楽」ではなく「芸術としての音楽」を届けようとするペトロールズが関わった意義は大きく、重要な役目を果たしたと言えるだろう。

M1:表現
M2:闖入者
M3:KAMONE
M4:雨
M5:Fuel

<Mr.Children>
3日間連続出演のMr.Childrenは、3日間とも雨具が必要になるほどの雨にはならず、天気も味方につけて、夏のヒット曲パレードと言いたくなるような、この会場に似合うシングル曲ばかりを連打する。まずは“innocent world”で1曲目から観客の心をがっちりと掴むと、続く“youthful days”では、歌詞の中の<乾杯>という言葉に合わせて、桜井と観客が乾杯のジェスチャーをする。3曲目“ニシエヒガシエ”では、「うわぁ~」と叫びながら、桜井はステージの左右に伸びる花道を走り抜け、ときには身体を折り曲げて全身の力を込めて声を上げる。前半からすでに怒涛の展開だ。MCでは、この日が最終日ということで、「やっと来たと思ったのに、あっという間」(桜井)と寂しさを表し、自分にとってap bank fesは夏休みのようなもので、毎年、ものすごく楽しみにしていると話す。そして、3日間とも晴天とはならなかったものの、輝く太陽の下でやることをイメージして選曲したという“君がいた夏”を演奏。その歌声で観客の心に晴れ渡った空を見せると、“名もなき詩”へとつなげる。さらに、7月26日に発売された最新曲“himawari”も披露。「今、一番みんなに聴いてもらいたい曲」と言い、「この曲でみんなをやっつけに来た」と桜井は宣言し、その言葉に違わぬ力のこもった歌を届ける。ときには観客を睨みつけるように、そしてその向こうに広がる大地、空にまで挑むように歌う。そんな雰囲気から一転、ラスト2曲は会場が一体となって楽しむ曲を。「さあ行くよ!」と笑顔で観客に呼びかけると、“エソラ”では左右の花道まで出てきた中川にマイクを向けてみたり、田原と笑顔で顔を見合わせたりする場面も。最後、“シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~”では、桜井から「バックアップしてくれ!」とお願いされた観客が本領を発揮! <シーソーゲーム>の大合唱でボルテージも最高潮に達し、その場にいる誰もを笑顔にして、3日間のMr.Childrenのステージは幕を閉じた。

M1:innocent world
M2:youthful days
M3:ニシエヒガシエ
M4:君がいた夏
M5:Tomorrow never knows
M6:himawari
M7:エソラ
M8:シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜

<Bank Band with NOKKO>
Bank Bandが鳴らす“RASPBERRY DREAM”のイントロが流れる中、ステージに駆け込んできたNOKKO。現在、28年ぶりに開催されているREBECCAのライブツアー中ということもあり、このREBECCAのヒット曲をパワフルに歌い切る。「ずっとこのap bank fesに出たかったんだけど、10年くらい子育てしてて(笑)」と言いながら「夢が叶った」と初出演の喜びを伝え、続いて、ソロとしてのヒット曲“人魚”を。年齢を重ね、よりたおやかになった歌声で聴かせる。そして、ラストはイントロが鳴った瞬間に観客から手拍子が沸き起こった名曲“フレンズ”。ヒットナンバーの嵐で会場を盛り上げた。

M1:RASPBERRY DREAM
M2:人魚
M3:フレンズ

<Bank Band with 七尾旅人>
七尾旅人の1曲目はMr.Childrenの「抱きしめたい」のカバー。中学生のときに隣の席に座っていた好きな女の子から借りたCDがMr.Childrenだったというエピソードを明かしつつ、桜井とはまた違った七尾のまろやかで温かみのある声でこの曲を届ける。続いて、東日本大震災のとき、被災後1ヵ月もたたない福島のうすいそ海岸を訪れた際に目にした光景を歌にしたという“Memory Lane”を、小林武史の鍵盤とともに静かに熱く奏でた。3曲目“サーカスナイト”では、曲の終盤に客席に降り、雨でぬかるんだ地面で泥だらけになりながらも、そんなこともお構いなしに熱唱。そして、ラストはその好きな子が好きだった人、櫻井をステージに招き、自身の“Rollin’ Rollin’”を二人で掛け合いながら歌うという、当時の七尾にとっては夢のような時間を。最後は泥だけの七尾を櫻井ががっちりと抱きしめ、「七尾旅人!」と紹介。観ているこちらも心が温まる場面となった。

M1:抱きしめたい
M2:Memory Lane
M3:サーカスナイト
M4:Rollin’ Rollin’

<WANIMA>
昨年の『Reborn-Art Festival × ap bank fes』にも出演したWANIMAが、1年のあいだでバンドとしての求心力をさらに高めてこの場に戻ってきた。ボーカルKENTAによる「WANIMAのライブは全員参加型ですよ!」という宣言で、“オドルヨル”からライブはスタート。先日筆者が彼らにインタビュー取材を行った際、「365日中360日はメンバーと一緒いて、音楽のこと、WANIMAのこと、どうやったらお客さんを楽しませられるかということばかりを考えていました」ということ話していたが、まさにこの意志と行動が、WANIMAの歌の説得力をさらに深めているように思った。2曲目“ともに”では、<どれだけ過去が辛くても暗くても 昨日よりも不安な明日が増えても 悩んだり泣いたりする今日も 進め君らしく 心踊る方>という言葉が、東北の再生・復興を願う『Reborn-Art Festival』のメッセージとともに、この地に優しく放り込まれる。「TANIMA(谷間)です!」「見たーい!」「違う、WANIMAです!」というメンバー間のやり取りや、変顔など、たくさんのユーモアを交えながら、シリアスすぎない方法で力強いメッセージ真っ直ぐ届けてくるWANIMA。大なり小なり、誰しもが過去の傷や未来への不安を抱いて生きているこの世の中で、WANIMAの歌は「お守り」として必要だ。最後は、WANIMAの音楽がお茶の間で鳴る機会のひとつとなった、auのCMソング“やってみよう”を会場にプレゼントした。

M1:オドルヨル
M2:ともに
M3:TRACE
M4:THANX
M5:やってみよう

<銀杏BOYZ>
現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』で、有村架純演じる主人公の叔父を演じ、お茶の間にまでその顔知らせた峯田和伸。そんな峯田がボーカルを務める銀杏BOYZが、『Reborn-Art Festival 2017 × ap bank fes』のバンドアクトの締めを務めた。ステージに一人、アコースティックギターを抱えて現れた峯田は、中一のときにFMラジオから聴いたMr.Childrenの「君がいた夏」の思い出を話し、「ああいうアーティストと一緒のステージに立てる」と、喜びを口にする。そんな峯田が1曲目に選んだのは“光”。一人弾き語りで歌い始めるも、途中でバンドメンバーが加わり、大きな渦のようなグルーヴが生まれて行く。刻々と闇に包まれて行く会場に、峯田の<光>という叫び声が響き、この日、このときにしか見れない光景が広がる。続く“若者たち”では、客席に降りて観客に身体を支えてもらいながら、熱くてヤバイ!ロックをぶちかます。さらに7月26日に発売した3ヵ月連続リリースの第一弾シングル“エンジェルベイビー”や、GOING STEADY時代から歌う“BABY BABY”など新旧織り交ぜての選曲で盛り上げる。そして、ラストは「どんな手を使ってでも生き延びて、また会おう」と約束すると“ぼあだむ”で飾り、10月に開催される自身初の日本武道館公演に向かう強烈なステージを見せつけた。

M1:光
M2:若者たち
M3:恋は永遠
M4:夢で逢えたら
M5:エンジェルベイビー
M6:BABY BABY
M7:ぽあだむ

<Bank Band with Salyu>
Bank Bandのメンバーがそれぞれの立ち位置についたあと、『ap bank fes』のお客さんに温かな拍手で迎えられて登場したのはSalyu。小林武史が演奏する“Rain”のイントロが静寂のなかで流れたところに、Salyuの美声が乗っかり、すっかり暗くなった会場に優しく響き渡る。1番を歌い終えたところでSalyuのとびっきりの笑顔がスクリーンに映し出され、そして、Bank Band全員の音が重なり合って壮大な演奏へと広がっていった。2曲目には、8月29・30日に開催される『四次元の賢治 -第1幕-』のために書き下ろされた“雪の下のふきのとう”を初披露。普段のSalyuとは少し違った歌い方で届けられたこの歌は、「ポストロックオペラ」と掲げられている舞台のたった一片でしかなく、その全貌が気になるパフォーマンスだった。最後は、「みなさんの毎日が愛に恵まれた日々でありますように」といった言葉を添えて、“Lighthouse”を歌う。黄色い温かな照明がステージを灯し、そこから漏れた光が会場全体を包み込んでいた。
M1:THE RAIN
M2:ふきのとう
M3:lighthouse

<Bank Band >
あっという間だった3日間。最後は、櫻井和寿がボーカルを務めるBank Bandのステージだ。これまでも、日本で生まれた名曲を歌い継いできたBank Bandが、ここでも3曲でその役目を果たす。まずはキリンジの“Drifter”で、堀込高樹が綴った歌詞を、櫻井は一言一言とても丁寧に歌っていく。次のフジファブリック“若者のすべて”は、まるで逝去したフジファブリックのボーカル志村正彦の声と櫻井の声が重なって聴こえてくる錯覚さえも起こすような、ドラマチックな演奏で魅せた。そしてもう1曲は、「日々生まれ変わっているこの街とみなさんに、この歌を捧げます」と言って披露した、syrup16g“Reborn”。さらに、「君と僕、空と海、音楽とみちのく杜の湖畔公園…なにかとなにかをつなぐ『と』を大事にしたくて」と、歌に込めた想いを語った上で“こだまことだま”を演奏。そして本編を締めくくったのは、オープニングでも演奏された『Reborn-Art Festival』のコンセプトソング“What is Art?”。「アートとは?」というテーマについて、再びアーティストとオーディエンスが曲を通じて話し合い、最後に「今日1日のライブアクトを通して、なにか価値観の変化は生まれましたか?」と、一人ひとりに尋ねているようだった。


鳴り止まないアンコールに呼ばれて、再びBank Bandが登場。小林は「“innocent world”で揺れていた手が、客席に降りた銀杏BOYZ峯田くんの身体を支えてたりする」と話し、「ジャンルの壁を超えていくこのイベントを支えてるのは、ここに来てくれている音楽ファンのみなさんです」と感謝を述べた。最後は、Salyuも入って、Bank Bandにとって初めてのオリジナル曲“to U”を披露。<今を好きに もっと好きになれるから あわてなくてもいいよ>という優しい言葉が2人の美しいハーモニーに乗って届けられ、記念すべき10回目の『ap bank fes』は幕を閉じた。


M1:Drifter
M2:若者のすべて
M3:こだまことだま
M4:Reborn
M5:What is Art?
EN:to U

次ページは、フードエリア、ワークショップをレポート>>>