7/29(土) 2日目

<オープニング>
あいにくの雨のなか、『Reborn-Art Festival 2017 × ap bank fes』2日目がスタート。空はグレー色だが、今年のステージデザインとなっている、東北の子どもたちが「東北の未来」をテーマに描いた数多くの絵が、会場を鮮やかに彩っている。オープニングのBank Bandステージに勢いよく飛び出てきた櫻井和寿は、「雨と友達になって仲良くやろうね!」「この雨音さえもバンドの音に変える」と話す。どんな状況も、見方や捉え方次第でよくも悪くもなることを知っている櫻井ならではの言葉が、レインウェアなどで雨をしのぐオーディエンスの笑顔を引き出していた。

M1:What is Art?
M2:奏逢 ~Bank Bandのテーマ~

<Bank Band with ぼくのりりっくのぼうよみ>
この日最初にBank Bandのステージへ招かれたのは、ぼくのりりっくのぼうよみ。現在19歳。つまり、Bank Bandのメンバーの平均年齢の約半分…いや、1/3と言ったほうが近いかもしれない。「大先輩に囲まれて、鬼緊張します」と言っていたものの、まったく臆することなく、“Be Noble (re-build) ”“在り処”“SKY’s the limit”の3曲を歌い上げる。筆者はこれまで、ぼくのりりっくのぼうよみのライブを何度も、様々なバンド編成で観てきたが、はっきり言って、今日のライブが最も濃密なものだった。圧倒的な語彙力を持つぼくのりりっくのぼうよみが発する独創的な言葉に加えて、基本打ち込みで作られたトラックの音を、小林武史(Key)、小倉博和(Gt)、亀田誠治(Ba)、河村”カースケ”智康(Dr)が、一音一音に意味を込めて丁寧に鳴らしていく。さらにそこにコーラス、ストリングス、ホーンが重なり、よりゴージャスな音色に。そんな特異な状況のなかでも、彼の歌がど真ん中で映えているステージを観て、改めて、ぼくのりりっくのぼうよみという存在のボーカリストとしてのユニークさと、楽曲自体の強度を思い知らされた。

M1:be noble(re-build)
M2:在り処
M3:sky’s the limit

<Bank Band with 藤巻亮太>
続いてステージに登場したのは、『ap bank fes』に欠かせないボーカリスト、藤巻亮太。“3月9日”の一小節を歌ったところで、会場から喜びの声が上がり、Aメロを歌い終えたところで、自然と拍手が沸き起こる。その一場面で、“3月9日”がどれほど愛され続けている曲であるかを実感させられた。2曲目は、レミオロメンの“スタンドバイミー”。昨年の『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』では、レミオロメンのデビュー曲“雨上がり”を歌って会場を驚かせたが、今年もまた嬉しい驚きを与える選曲だ。サビの<涙は乾くよ 夏の太陽で>という言葉が、藤巻の温かな笑顔とともに東北の空に向けて放たれる。最後は、「地元・山梨の公民館に機材を持ち込んで曲作りをしていた際に、自分にとっての原風景や大切な人を思い出して作った」という、新曲“北極星”を披露。「雨止んだ!?」と、また温かな笑顔を浮かべて空を見上げながら言葉を放ち、ステージをあとにした。

M1:3月9日
M2:スタンドバイミー
M3:北極星

<きのこ帝国>
SE“MAKE L”が流れるなか登場した、きのこ帝国。ボーカル佐藤千亜妃は、昨年Bank Bandのボーカリストとして出演しているが、「今年はきのこ帝国として来られて嬉しいです」と喜びと感謝を述べる。東北という場所やイベントのテーマを捉えた上での選曲だったのかどうか、MCでは一切語られなかったが、“疾走”“猫とアレルギー”“スカルプチャー”“東京”“Donut”と、きのこ帝国の楽曲のなかでも、「誰かと生きること、そして離れてしまうこと」の幸せと切なさは表裏一体であることが一際強く表現された曲の並びだったように思う。決して手拍子が起こったり、みんなで腕を挙げて左右に揺らしたり、飛び跳ねたりするような音楽性ではないが、佐藤の歌と、ギターのあーちゃんとともに掻き鳴らされるギターの轟音が、圧巻とも言える音の渦を生んでいて、観る者の心を揺さぶるステージだった。佐藤は、『Reborn-Art Festival』の一貫として、8月29・30日開催に開催される『四次元の賢治 -第1幕-』にも出演が決定している。

M1:疾走
M2:猫とアレルギー
M3:スカルプチャー
M4:東京
M5:Donut

<ART-SCHOOL>
ボーカル&ギターの木下理樹が音楽だけでなく、アートワークデザイン、フォトグラフ、アパレルなどクリエイティブで柔軟な発想を持った各ジャンルのスペシャリストが集結したチーム『Warszawa-Label』の代表を務め、まさに今回の『Reborn-Art Festival 2017 × ap bank fes』の主旨に相応しい活動をしてるART-SCHOOL。今回はその中の“音楽”を見せるステージ。クールさと熱さの二面性を併せ持つ木下の歌声が、雨もすっかり上がり、濡れた地面や木々を通過した涼やかな風が吹く会場の雰囲気とマッチしている。戸高がつま弾くギターの音から始まった“ニーナの為に”からライブをスタートさせると、7月26日発表されたばかりの新曲“スカートの色は青”もこのステージで初披露。観客を煽ったり、ステージを走り回ったりはせず、ただ淡々と自分の思いを込めた曲を鳴らす木下。新曲を披露する前も他の説明はなく「新曲をやってみます」と言っただけだが、それだけに声の限りに叫ぶように歌う姿には胸を打たれる。「叫ぶだけの曲をやります(笑)」(戸高)と言って演奏された“あと10秒で”と“FADE TO BLACK”のラスト2曲では、そのクールな熱さが届いた観客たちが腕を上げて応えていた。

M1:ニーナの為に
M2:SWAN SONG
M3:14souls
M4:スカートの色は青
M5:その指で
M6:あと10秒で
M7:FADE TO BLACK

<Mr.Children>
本日も、1日のタイムテーブルの真ん中を担うのは、Mr.Childrenだ。ここ数年のあいだは、アルバム発売前の未発表曲ツアー、8人編成の「ヒカリノアトリエ」でまわったジャズやロックなどポップス以外の側面も見せるホールツアーなど、音楽的に様々な試みに挑戦していたMr.Childrenだが、つい先日まで開催されていたドームツアーは、ほぼシングル曲の大サービス的セットリストだった。再び彼らは「誰しもが口ずさめる歌」に宿る力の奇跡的な強さを思い知ったかのように、この場所でも、ヒットソングを惜しみなく歌い続けていく。桜井は、今日のこのあとのステージや明日のためにエネルギーをセーブすることなど一切考えずに、凄まじい集中力を注ぎ込んで、ステージの左端から右端まで全力で駆けていき、センターで飛び跳ね、そして「歌」を会場後方まで響かせる。スクリーンに映るメンバーも、時々「歌」に合わせて口を動かしている。昨日、秦 基博と一緒に“ひまわりの約束”を歌っていたときにも感じたのは、桜井和寿というボーカリストは、本当に、心底「歌」が好きなんだなということ。明日も控えているためまだ曲名を伝えることはできないが、偶然にも、最後の曲の最後の一言は、「歌」という言葉で締めくくられた。

M1:innocent world
M2:youthful days
M3:ニシエヒガシエ
M4:君がいた夏
M5:Tomorrow never knows
M6:himawari
M7:エソラ
M8:シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜

<Bank Band with LOVE PSYCHEDELICO>
この日の3組目となるBank Band withにはLOVE PSYCHEDELICOが登場。Bank Bandの奏でる音に導かれるようにステージに入って来ると、まずはご挨拶とばかりに、NAOKIがステージ際まで出てギタープレイで観客を煽り、そのまま“LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~”へとなだれ込む。世間に強烈な印象を刻んだこのデビュー曲に続いては、7月5日にリリースされたばかりの最新アルバム『LOVE YOUR LOVE』から“Might Fall In Love”を。変わらぬ“デリコサウンド”を届ける。そして、「あっという間の時間だったけど」(KUMI)と言うように、ラストの“Last Smile”へ。Bank Bandの演奏により曲にさらなる重厚感が生まれ、このライブならではの魅力を携えたサウンドを聴かせてくれた。

M1:LADY MADONNA 〜憂鬱なるスパイダー〜
M2:Might Fallin’ Love
M3:Last smile

<Bank Band with TK from 凛として時雨>
続いてBank Bandのステージに導かれたのは、TK from 凛として時雨。凛として時雨というバンドを率いながら、並行してソロ活動も行っているTK。最新ソロアルバム『white noise』からの1曲目“罪の宝石”では、小林武史の奏でる鍵盤の音に乗せて、スタンドマイクの前に立ち、囁くような声で歌う。かと思えば、2曲目“haze”では、アコースティックギターをかき鳴らしながら、アッパーなナンバーをハイトーンボイスで歌い切り、ラストとなる3曲目“unravel”では、エレキギターに持ち替えて、叫ぶように歌う。MCではシンプルに「初めまして。凛として時雨というバンドをやっている、TKと申します」と、自己紹介をしただけだったが、たった3曲で3曲3様の姿を見せ、その有り余る才能を見せつけた。

M1:罪の宝石
M2:haze
M3:unravel

<ゲスの極み乙女>
ゲスの極みの乙女。の楽曲の凄さは、サウンドはジャズ、クラシック、プログレ、ポストロックなどを混ぜ合わせたテクニカルなアンサンブルであるにもかかわらず、誰しもが口ずさめるポップソングとして世の中に届けたところにあるが、この日彼らは、“私以外私じゃないの”“ロマンスがありあまる”といった曲を選んではこなかった。最新アルバム『達磨林檎』に収録されている“シアワセ林檎”“心地艶やかに”や、インディーズ時代の楽曲“スレッドダンス”“キラーボール”など、新旧織り交ぜたセットリスト。“キラーボール”でキーボード・ちゃんMARIのクラシックの素質が全開のピアノソロを聴かせたかと思えば、“スレッドダンス”ではジャジーなフレーズを響かせるなど、それぞれの曲で、各メンバーの音楽性の広さと深さを見せつけた。自分が作った曲を3か月間で43曲もリリースするほどのソングライティング力を持ち、プレイヤーたちの各々の個性を存分に引き出してまとめ上げ、そして歌いにくいメロディーラインを飄々と歌い上げる川谷絵音、素晴らしいステージを見せてくれた。

M1:シアワセ林檎
M2:パラレルスペック
M3:サイデンティティ
M4:心地艶やかに
M5:キラーボール
M6:スレッドダンス

<ACIDMAN>
徐々に日が落ち始めるこの時間帯にステージに上がったのはACIDMAN。ゆったりとしたテンポの“リピート”でアイドリングするかのようにライブを始めると、続く“FREE STAR”では、ボーカルの大木が「この瞬間、一分一秒を最高のものにしよう!」と呼びかけ、激しいロックナンバーで一気に観客の熱気に火を付ける。そして、MCでバンドがことし結成20周年を迎えていることを話すと、「やらないわけには行かない」と、7月26日にリリースされたばかりの新曲“ミレニアム”も披露。さらに「もう1曲盛り上がって行くぞ!」(大木)と、“ある証明”につなげる。大きなステージにたった3人で立ち、3人だけの音で挑むメンバーのシルエットが、会場に闇が降りたことで映えるようになった照明の光で浮き彫りになり、その潔さが視覚的にも入ってくる。しかし、ラストはその3人という、この20年貫き続けていたスタイルを変えてもいいと思わせたという小林武史を招き、小林のプロデュースした“愛を両手に”をプレイ。この曲はACIDMANにとって初めてプロデューサーを起用した曲であり、常に宇宙や死生観について歌ってきた大木が、祖母の死というパーソナルな思いに踏み込んだ楽曲。肉体が消えたとしても、魂は生き続けていると信じている、この東北で失われた命もきっとどこかで生き続けていると、歌う前に大木がそこに込めた思いを語ると、その魂たちが応えているかのように、その曲の間だけ雨が降るという奇跡の瞬間も。言葉にならない思いがこみ上げるライブとなった。

M1:リピート
M2:FREE STAR
M3:ミレニアム
M4:ある証明
M5:愛を両手に

<Bank Band with Chara>
Bank Band withのラストを飾るのはChara。昨年は20年ぶりに復活したYEN TOWN BANDのボーカリストとしてap bank fesのステージに立ったが、ことしはソロアーティストして登場。昨年との違いは髪型くらいと笑いながらも、19日にリリースしたばかりのアルバム 『Sympathy』からタイトル曲を披露。さらに「Charaの曲もやっていい?」と冗談めかしつつ、“ミルク”“やさしい気持ち”と代表曲も惜しげもなく歌い、「私、調子に乗るわ(笑)」と、ワンマンライブかのような盛り上がりをみせる。とはいえ、最後はやっぱりYEN TOWN BANDのメンバー、小林もステージにいるということで“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”で締め、短い時間ながらを貫禄の“チャラワールド”で観客を楽しませていた。

M1:ミルク
M2:Sympathy
M3:やさしい気持ち
M4:Swallowtail Butterfly ~あいのうた~

<Bank Band>
そして、この日も全ステージのトリを務めるのは、Bank Band。ボーカルの櫻井をステージに呼び戻し、Bank Bandの曲をプレイして行く。前日は大雨の中だったが、この日は雨も上がり、その雨のおかげで涼やかな風が吹くという、ライブには絶好の環境。櫻井も「今日はこんなに気持ちいい」と上機嫌で話し、「Bank Bandの演奏も冴え渡っています!」と笑う。そして、その冴え渡った演奏で数曲を披露したのち、アンコールにも応え、2日目のap bank fesは終了。前日同様にところどころ雨に見舞われたものの、観客もその雨と上手に付き合いながら楽しんだ一日となった

Salyuも登場し、「to U」を披露しました。

M1:Drifter
M2:こだまことだま
M3:Reborn
M4:What is Art?
EN:to U

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