原案・宮沢賢治、細野晴臣も友情出演する、「ポストロックオペラ」とは?

『Reborn-Art Festival』(以下、『RAF』)の一環として、来たる8月29日と30日の2日間、石巻駅から徒歩10分のところにある中瀬公園内特設テントにて、『post rock opera「四次元の賢治 -第1幕-」』が上演される。

原案・宮沢賢治、脚本・中沢新一、音楽・小林武史、映像・伊藤存、出演者には、オオヤユウスケ(Polaris / SPENCER)、Salyu、佐藤千亜妃(きのこ帝国)、桐嶋ノドカといったミュージシャンたちが名を連ね、ナレーションは同じくミュージシャンの安藤裕子が担当、細野晴臣も友情出演するという。まさに前代未聞の「ポストロックオペラ」となりそうだ。

CAP:『post rock opera「四次元の賢治 -第1幕-」』(詳細を見る)

中沢新一、小林武史よりコメントが到着「新しいアート表現を探求したい」

『四次元の賢治 -第1幕-』は、『RAF』制作委員であり「Reborn-Art」の名付け親でもある思想家・中沢新一の、ひとつの着想からスタートしたという。『RAF』という場で、何か新しいアート表現を探求したい――そう考えた中沢は、東北が生んだ文学者・宮沢賢治に着目。北上川を物語の舞台に据え、宮沢賢治の数々の名作のなかから引用やパラフレーズなどの手法とオリジナル要素の追加によって、ひとつの大きなストーリーを作っていったのだ。
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」(『やまなし』)など、宮沢賢治作品の名フレーズが各所に散りばめられた物語。その脚本を小林武史が一つひとつ丁寧に音楽へと変えていき、四人の登場人物たちがセッションのように歌い上げる。まさに「オペラ」のような歌劇に仕上げたもの、それが『四次元の賢治』なのだ。

本作の上演に寄せて、両者は次のようなコメントを届けてくれた。

東北は不思議な土地である。
そこでは人が、人として営みながら、死者や、動物や植物がお互いの領域に様々に入りこんで生きている。

宮沢賢治もそういう人だった。
人間には人間の論理が、川蟹には川蟹の論理があって、それらはふだん、相容れないと考えられてはいるけれども、
おのおのが入り込んだ時、実現されるものがある。それが彼にとっての詩であり、童話だった。

3.11の後、石巻を舞台にするリボーンアートで小林さんと僕が考えていたのは、そういう、土地と音楽や、食や、アート、思想が入り込んだ芸術祭だった。
まだ道半ばの試みではあるけれど、この『四次元の賢治』では、確かにそのことが実現されている。

中沢新一


ぼくが音楽を担当しているこのオペラを簡単な言葉で表すのは難しいのですが、あえていえば、この世には目に見えない大切なものがあって、そのありかを四次元と呼んだときに見えてくる世界をここで描いているのだと思います。

宮沢賢治や震災のあった石巻や北上川をとおして、ファンタジー感もあふれながら、リアルな死生観に触れようとする作品ではないでしょうか。

構想としては3幕あるうちの、今回は1幕だけの上演となるのですが、これからどんどん成長していく舞台になるかと思います。

ぜひその始まりをご覧になっていただきたいです。

小林武史

 

さらに、リハーサル現場でオオヤユウスケとSalyuに話を聞いた

オオヤユウスケが「宮沢賢治」役として、Salyuがその妹「宮沢としこ」役として朗々と歌を響かせ、佐藤千亜妃と桐嶋ノドカの二人が「川蟹」の兄弟として、美しいハーモニーを響かせる。ナレーションを除けば、劇中の約98%が歌唱シーンである『四次元の賢治』のリハーサル風景を見学させてもらったが、それはまさしく「異色の歌劇」と言うべき、様々な予感と期待に満ちたものとなっていた。本作で宮沢賢治役を務めるオオヤユウスケは言う。

オオヤユウスケ:僕自身、まったく初めての経験なので、最終的にどんな仕上がりになるのか、正直まだまだ手探りなところではあります。ただ、共演者がいずれもミュージシャンということもあり、一つひとつ手探りで作り上げながら、これまで体験したことのないものができあがりつつある。そんな感覚を持っています。

さらに、宮沢としこ役を務めるSalyuは、本作に対する意気込みを、次のように語ってくれた。

Salyu:まずは、中沢先生と小林さんのタッグというのが、意外性に富んでいて最高ですよね(笑)。中沢先生も、「小林さんが、こんなに可愛らしい世界観を作る人だとは思わなかった」って驚かれたみたいですし。ホント、可愛らしい曲たちなんです。

お芝居のほうは、宮沢賢治の宇宙観というか、人間としての志や思想といったものが色濃く反映されたものになっていると思います。なので、そういった「人の心の世界」というものを、小林さんの音楽によって感じ取ってほしい……というか、私自身、自分でやっていて、そういうものを感じ取れるところが、非常に興味深いなと思っています。

Salyuいわく、多くの人々にとって「宮沢賢治という人が、これまで以上に身近に感じられたり、また新しい興味を持つきっかけになったりするような舞台」になるであろうという『post rock opera「四次元の賢治」』。その仕上がりに期待したい。

CAP:『post rock opera「四次元の賢治 -第1幕-」』(詳細を見る)