「『Reborn-Art Festival』へ続いていく『Reborn-Art Tour』という新しい試み」

小林:さっき藤原くんが言った「海と共に生きてきた場所」でいうと、半島の至るところが海と共に生きてきたところであり、でも山や豊かな緑もあってね。もっと山と海の生態系の循環みたいなことも考えていきたいと思っていて。来年の『Reborn-Art Festival』は、50日間ぐらいの開催期間の中で、音楽も、いろんな形でいろんなエリアに広がっていくことになるかなと思います。そういう意味では、今回、新しい試みとして、7/29の前夜祭前の時間を使って、午前中ぐらいからバスで『Reborn-Art Tour』という、半島を巡るツアーがあるんだよね。来年の『Reborn-Art Festival』が行われる場所であり、海と共に生きてきたこととか、自然と共に生きてきた知恵みたいなことをみんなに体験してもらおうというツアーなんです。
ap bank fes では自然観察会をやっていたけど、それのもっと大きなバージョンというか。そういう新しい取り組みっていうのも今回は加えていて。これは森くんが考えそうなプログラムなんだけど、地元でがんばっているスタッフと共に「これはやりたいね」っていう話は出ていて実現となったんです。

:過去の ap bank fes も3日間だけじゃなくて、長い期間でap bankがやっていることを感じてほしいと思っていたので、例えば食を通じた命の循環の実感として、それぞれの家やオフィスで、ナスやトマトとかを育ててみよう、という企画を考えて。それはステージスタッフもアーティストもお客さんもみんなでやってみようというプロジェクトだったんですが、思いのほかいろんなことをみんな感じてくれるんですね。


藤原:それはフェスの前に育てていくんですか?

:そうなんです。フェスの前に種が届いて、自宅で育てて。会場内にはスタッフが育てた野菜を飾ったりして。2、3日のイベントでおしまいじゃなくて繋がっていくことを伝えたかったので、そういう試みはしていました。今回はもっともっと大きな規模で、何年間もかけてこのアートイベントができていく。プレイベントが終わっても続いていくよってことを、もうちょっと長いスパンで感じてもらうというか。来年も、再来年も来てほしい。夏だけじゃなくて春や秋も来てほしい。いろんな角度から牡鹿半島の素晴らしさを伝えるのが『Reborn-Art Tour』なんだろうなと思っていて、それはすごく面白い試みだと思いました。 ap bank fes って環境のことからスタートしたので、これだけの人が集まると、これだけのごみが出てということを数値化して、それを分別したら、ごみも他の行き先があるってことを、あえて野外フェスという過酷な場所で提示していて。それが正解ということではなくて、いろいろな選択肢があるってことを見せて知ってもらうことによって、ごみはごみだけじゃなくて、その行き先があることや、オーガニックコットンが作られることの繋がりや背景を細かく丁寧に伝えるっていう見せ方だったんですけれど、来年の『Reborn-Art Festival』がどういう規模になるかは現状はっきりとはわからないけどそれも含めて、何もないところから見てもらうというのは、すごく面白いチャレンジだなって思いますね。

小林:一つ一つのツアーにワークショップを入れているんだけど、地域の伝統に根付いているものだったり、漁業の取り組みの一端をみてもらったりとかね。本当に「Reborn-Art」がこれからどういうふうに拡散していくかっていうところの土台であり、その環境を一回見てもらうっていう感じだね。バスが旅して半島を巡り、前夜祭に集結する、みたいなイメージで、これをつくったんだけど、ぜひ参加してほしいなって思ってます。「Reborn-Art」ということの、半島でのキックオフイベントみたいなことを担うような気もしてます。

藤原:小林さんは、もうそれこそ何十回も牡鹿半島に行っていると思うんですけど、僕もこのプロジェクトに関わるようになってから、小林さんから聞いた「あの人面白いよ」とか「この場所いいよ」とか「これ美味しいよ」とか、なんかそういうことを追いかけて半島に通っています。そうやって牡鹿半島や石巻を経験していくと、どこか濃密な文学作品を追体験するような面白さもあって、単に旅行に行くということではない、特別な物語の始まりに立ち会うような感覚で皆さん来てくれたら良いんじゃないかと思います。

小林:今回、石巻っていう商業都市でもあるところを上手に使わせてもらうっていうのもあるんだけど、牡鹿半島も、震災で人口が減っているところが多くあるけれど、でもそういうネガティブなことがあったからこそ、外から人が入って来ることによって新しいポジティブっていうのが生まれるというのもあるんじゃないかと感じていて。それを『牡鹿ビレッジ』という構想で体現しようとしてるんです。新しい街をつくるというっていうのとは違うけれど、作品であり、漁業を実際にやってる人たちも作品の中に入ってくる。観光っていう側面もあるだろうし、現代アートのアーティストも入ってきたり、藤原くんが建築としてそこに何かを持ち込んできたり。人の新しい視線が出てきたりね。命が循環しているというか、なんかそういうことが、「新しい場をつくる」ってことなんだよね。


藤原:そうですね。「ビレッジ」は浜の人たちの産業の場でもあるし、アーティストの作品の場でもあるし、人を招くおもてなしの場でもある。本当に新しい関係を生む場になったら素晴らしいと思います。