私たちが生きるうえで欠かせない「食べる」ということ。まさに「Reborn-Art Festival」のテーマである『生きる術(すべ)』の一つとも言えます。生産者とのつながりや、素晴らしい食材をできるだけシンプルに料理することを大切にしながら「食」と向き合っている目黒浩敬さんと小林武史が、「Reborn-Art Festival」における「食」について語ります。

「食を通して本質に近づく」

小林:目黒さんは、食材含めて「食」全体のことを考えていると思うんだけれど、僕もそういった全体のつながりが大事だと常々感じていて。だから、目黒さんのような考えを持った、食のプロが時代にとって必要なんだと思うんです。「Reborn-Art Festival」に向けて、というか、目黒さんが食に対して大切に思っていることを聞かせてもらえますか。

目黒:僕が以前やっていたレストランに何度か小林さんが来てくれていて、その時に、「Reborn-Art Festival」の話をうかがったんですよね。その内容と自分が考えていた構想がとても近いなと思ったんです。このイベントに関わることで、自分の構想も具現化していくんじゃないかとも思ったし、向いている方向が同じなので、僕にとってもすごくありがたい話だと感じました。
今、専念しているワインづくりをはじめ、今まで野菜栽培や、生ハムづくりなど多岐にわたって、いろんなことにトライしてきました。でもそれは自分だけで完結することが良いと思っていたわけじゃなくて、ありがたいことに本当に食に興味のある方々がうちのレストランを利用してくださっていて、その方たちにより満足して頂きたい想いがすごく強かったということがあります。
知恵と恩恵を育んでくれた私の田舎は、過疎や耕作放棄地が、どんどん進んで一次産業が衰退していく。その対策として、六次産業化が進み、小さな単位のものを一つにしていって一つの企業みたいになってしまうと、何かが一つ崩れてしまった時に全体が崩れちゃうんですよね。一次産業が円滑に循環しない限り、経済も環境も良くならない。シンプルに考えた時に「食」に繋がることって、大変だけど本当に大切なことだなって思うんです。日常にある「食」だからこそ、みんなが意識をすれば変えていける。1日1回でも良いから「食事を楽しむ」という時間を取って欲しい、と思うんですよね。


小林:本当にそうだよね。

目黒:楽しむことから、食を考えるきっかけにしていきたいし、そこから変わっていくと思うんです。僕は、料理人には3パターンあると思っていて、一つはアルチザン(職人)として、料理を作ることだけを突き詰めていく料理人。二つめは、アルケッチァーノの奥田さんのように食と地域を絡めながら広めていく料理人。三つめは言葉にしていろいろな人たちに伝えて行く料理人。もちろん一番多いのは、アルチザンとしての料理人なんですけれど、これからは、伝えたり広める存在が重要になっていくと思うんですよね。

海面には牡蠣の養殖場が見える


小林:目黒さんがやっていることって、すごく難しいことなんだと思うんです。この社会の中で、生産者や地域のあり方、そこでの担い手のあり方を考えた時に、「黙って俺の背中を見ていろ」だけでは、新しい人や場所が育っていかないだろうなと思うところがあるから。現役の料理人が料理を作るだけじゃなくて、その言葉や行動と共に「場づくり」というようなものをやっていくということが大事なんだと思うんです。

目黒:「食べること」って、「生きること」に直結していますよね。自分たちのパワーの源は、「食」っていう人間の基本でもあるし、穏やかで豊かな感情表現の中から、新しいものがクリエイトされることでもあると思うんです。そういうことは今、注目されているけれど、失われつつあることだとも思うんですよね。その根本的なこととも言える第一次産業から見直していくことが、僕がやろうとしていることと、今回の「Reborn-Art Festival」のテーマである『生きる術(すべ)』がぴったり当てはまったんです。だから、本当に本腰を入れてやってみたいと思ったんですよね。

小林:物事って、なかなか計画通りにはいかないし、その都度、反応していかなくちゃいけない。「Reborn-Art Festival」のテーマである『生きる術』っていうことも同じで、本当に反応していくことが重要。食材との反応も、料理に反映されていくんだと思うんだけれど、反応する力を持ちながら場づくりをしていくということは、すごく楽しみだよね。と同時に、「食」を通していろいろな社会の問題が出るからこそ、学びにもなっていくしね。僕らが何を大切にするべきかを、みんなで感じながら、考えていけたらいいなと思うんですよね。


目黒:「Reborn-Art Festival」という大きな機会を通して、少しでも継続して今後につながっていく仕組みをつくっていきたいと思うんですよね。プレイベントがきっかけとなり、本祭でじっくり本質をつき詰めて行くような流れにしたいと思っています。

小林:2017年に向けて計画している白い浜のレストラン(★)も、その想いが反映された場所になるよね。きっと究極のアナログなレストランというものになりそうだよね。

目黒:今ある自然を感じていただけるようなレストランにしたいですね。野外にも席を設けたりして。


小林:雨が降っちゃった時はどうする?

目黒:テントを張って雨よけするとか…。

小林:お天気も含めて自然を感じながら食事を楽しんでもらえる場所にしたいね。