ap bank fes休催から5年を迎える2017年の夏「Reborn-Art Festival」の開催が決定しました。それに先立ち2016年の夏、プレイベントとして「Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016」が開催されます。アート、食、音楽、伝統芸能などが混在する、新たなかたちの野外イベントに込めた思いを二人が語ります。

「いろんな人の表現や思いに出会える場をつくること」

櫻井:僕が被災地の現状について知ってる情報は本当に少ないんだけど、インフラとかは随分整ってきているように見えるところもある。でも、まだまだ復興が進んでいないところはあるし、まだ仮設住宅に住んでいらっしゃる方もいっぱいいるんですよね。

小林:そうだね。復興が進んでいないところはまだまだあるね。



櫻井:僕が一番最初に行ったのは、よくテレビの映像で流れていたようなところが多いかもしれない。日和山とか危険区域に指定されているようなところや、住宅はダメだけど工業地としては使ってもいい、といわれてるところとか、あとは雄勝のローズファクトリーガーデン。それと波板の地域交流センターで地区の区長さんとお話させてもらったんだけど、とても腰の低い謙虚な方で、とにかくボランティアに来てくれた人たちに感謝してるって仰っていて。そういう人たちがいつここを訪れても迎えられるように、いろいろ用意してるんですよね。もし来てくれたら、その人たちに、「こんなに綺麗になったよ」ということとお礼を伝えたいって言葉があって、それはすごく印象に残ってる。きっと僕も、被災した土地に住んでいて誰かによくしてもらったら、よくしてもらったままでいることに心苦しさを感じると思う。支援した人、された人の関係じゃなくて、自分も人を喜ばせたりとか、もらった力を返したいと思うだろうし。アートフェスは、そういう場になったらいいなと思って。

小林:それは本当に同感でね、新潟の『大地の芸術祭』に『うぶすなの家』っていうところがあって、僕は2011年に行ったんだけど。昔からそこでつくられていた食事を再現するみたいにきちんと地元のおばちゃんたちがつくってるんだよね。でも日常では、自分たちは化学調味料を使ってたんだって。でも芸術祭をやる人たちと話しあって、来るお客さんたちにちゃんともてなしをしようよ、という話を受けて、おばちゃんたちは頑張ってやってみたんだって。そうしたら自分たちも気持ちがいいし、心が通じていくようになれたっていうことを言っていてね。だから僕らも変に「そのままでいいんだから」って地元の人たちに言ってると、地元の人とお客さんの間に隔たりができちゃうと思うんだよね。でも、来る人たちに対して気持ちを込めて、ベストを尽くして何かをする、みたいなことが、なにか「途切れてしまったもの」の代わりに、いろんなものを生んでいくんじゃないかなという気はするんだよね。



櫻井:『大地の芸術祭』は、おばちゃんたちがすっごいいきいきしてたしね。

小林:そうそう。そこに加わる「アート」は、想像力を駆使して、命とか世界とかいろんなものを映すものになると思う。僕が芸術祭を柱にするようなイベントを考えた理由は、やっぱり音楽祭だと2、3日で終わってしまうじゃない。芸術祭のかたちをとると40日とか50日間とかやれるわけで、しかも会期外でも常設作品が見られたり、施設が使われたりすることで長い時間、地域の中に様々な循環が生まれていくことになるからなんだよね。来年以降もその長い期間の間に、スケール感は少し小さくなるかもしれないけど、ap bank fesのようなものもやりたいな、とは思っているんだよね。アート作品や、施設の作り込みもあるから、毎年やるというものではなくて、2、3年に1回という開催になるんだけどね。個人的にはap bank fesのバトンがそれぐらいの感覚で渡っていくのがふさわしいような気もしているんだよね。