食に関しては、間違いなく来てくれた人は満足できると思う。(浩一)
—これまで「音楽」と「アート」の融合について話をしてもらいましたけど、『RAF』は、そこに「食」も入ってきます。その要素も入れた理由を話していただけますか?
小林:もともと「ap bank」として、食のことを中心としたプロジェクトをやってきたし、『ap bank fes』でもそこは大事にしていて。僕は、食べることがもちろん好きだし、やっぱり社会や世界の在り様って、食に出るよね。それに、食べ物は東北でやることの楽しみでもあると思う。
恵津子:美味しさが、東京と違うんですよね。
浩一:もう何十回も石巻に行ってるけど、食にモチベーションを持っているところがだいぶあるかも(笑)。
浩一:アーティストにも、「美味しいもん食べに、現地視察行こうよ」みたいな感じで連れて行ってたり(笑)。食に関しては、間違いなく来てくれた人は満足できると思う。特に小林さんはグルメだし、信頼できるフードキュレーターがいるので。
小林:目黒さん(浩敬 / 『RAF』の食に関するトータルディレクターを務める)は、本気にならざるを得ない人だから。食べるものにこだわりを持ったご両親に育てられていて、食べることに対してかなりセンシティブな人なんですよ。
-「なんちゃってオーガニック思考」とかではない。
小林:全然。食べ物に本当に真摯で、その姿勢が、新しい意識を持ったシェフたちから絶大な信頼を得ているんですよね。この先、日本全国の名だたる存在になるようなニューウェーブを起こす人だと思う。だから食べ物に関しては、本質的なものを追求していて、「普通のフェスとは違う」って言えると思いますね。
東京とか関西とかだと、みんな時間感覚を圧縮させて、合理的に生きていかなきゃいけないっていう考えに曝されていると思うんですよ。(小林)
-石巻で芸術祭をやるというのは、重たくてシリアスになる部分もあるとは思うんです。正直、石巻や被災地に行ったことがない人が、日本国民の大多数だと思うんですよ。
浩一:そうだねぇ。
-でも、先ほどもあったように、この場所だからこそできることがある、と。
小林:東京とか関西とかだと、みんな時間感覚を圧縮させて、合理的に生きていかなきゃいけないっていう考えに曝されていると思うんですよ。石巻に行くと、いろいろ越境して見られる。お客さんやアーティスト、ボランティアの方、地元の方が、立場を超えて、「こんなにも壁に阻まれないで出会えるんだ」って思ってもらえる場所だと思うんですよね。
-あの場所だからこそ、出会う場所として、有名無名関係なくみんなが交われるフラットさが生まれている。
小林:実際、プレイベントのステージ裏でも、みんなが相当の交わり方をしていて。それは櫻井くんもすごく言っていて、きっとそういう場所で鳴る音というのがあると思ったんだと思う。
恵津子:来てくれた人が、「石巻、うらやましいな」みたいに思ってくれたら勝ちだと思います。
浩一:そうそう、目標はそれ。「東京にはない面白さが石巻にはある」ってね。こないだヨタ(木崎公隆・山脇弘道からなる現代アートユニット)から連絡もらったんだけど、あいつらは牡鹿半島以外の島とかにも結構行っていて、「すっげえ面白い!」って言ってた。彼らが、そういう場所をいじり始めて、作品を作り始めたら、本当にあの地域は激変するな。
恵津子:可能性はいっぱいあるからね。
浩一:シリアスすぎちゃって楽しさがないのは、ダメだと思うんです。そりゃ「難解すぎるアートを被災地で見る」ということに、誰が来るの? ってなるよね。だから、アート的にも気持ちが上がるものを展示したいと思っているし、音楽あり、フードありの「祭り」として来てもらっていいんじゃないかな。
小林:僕たちもお客さんも、フットワークは相当軽いものになると思う。それでいて、本質的なところにもがっちり届く。そういうものを作りあげていくので楽しみにしていてもらいたいですね。