旅をすること自体がひとつのアートだと思う

小林:今年はap bank fesのチケットにアートパスポートがついていて、ap bank fesとは別の日でも牡鹿半島エリアを回ってもらえるようになってるんだよね。石巻市内では、夜遅くまでアート作品がみられるようにしようとも考えているので、ap bank fesを観てから石巻に移動して、夜は市内を楽しんで、次の日は牡鹿半島へ行く、なんていうコースもいいんじゃないかな。牡鹿半島は循環バスで回れるようになっていて、そのバスも趣向を凝らしたものにする予定でね。車内で、そこでしか聴けない架空のラジオ番組を流したりね。そこを訪れる旅自体を楽しんでもらえればいいなと思ってます。

櫻井:僕が越後妻有(「大地の芸術祭」)に行ったときに感じたのは、旅をするということ、旅をして日常とちょっと離れたとこでなにかを体験するということが、その人の価値観を変えることもあるんじゃないかということだったんです。それはもう、旅自体がひとつのアートとも言えるんじゃないかなと。そしてもうひとつ、アート作品というのはやっぱり非日常のもので、その作品を観ること、感じることで自分の感覚が変わっていくところがあって。旅とアート、その両方があることで、より、スーッと心にアートが入っていくように感じられたんですよね。すごく素直に、自分の価値観を見直したり、あ、こんな物事の捉え方があったんだ、みたいなことに気づけて、とてもよかった。だからきっと、今回Reborn-Art Festivalに足を運んでくれた人は同じように思ってくれるんじゃないかと思ってるんです。

小林:それが、地方型の芸術祭のいいところでもあるよね。今回は「食」もテーマとなっているけれど、牡鹿半島ではね、バスを下りてから10分くらい歩かないといけない場所にレストランがあったりするの。決して便利ではないかもしれないけど、時間をかけてその土地を五感で感じながら歩いていくと白い浜辺に辿り着いて、そこに、そこでしか食べることのできない食事を出してくれるレストランがある。たったの一食だけど、それは、その旅でしか出会うことのできない意味のある一食になるんじゃないかなと。そういったことも含めて、遠くから足を運ぶ人だけでなく、地元の人にとってもこの期間、そこを訪れることをひとつの旅として楽しんでもらいたいと思う。櫻井くんの言ったように、旅しながら新しい自分に出会えるかもしれないしね。

櫻井:アーティストやミュージシャンにとっても、そういう場所で普段とはちょっと違うことをやるというのはすっごく楽しいことだなと思います。

小林:他のミュージシャンからも、そういう場所でぜひやりたいことがあるという声をいろいろと聞いていてね。色々と実現するのが楽しみでもある。長期間だし、始まってから調整したり変化していく部分も大きいと思うからね。お客さんの声や盛り上がりも影響するだろうし、そこはもう、地元の方やスタッフ、アーティスト、ミュージシャン、みんなでセッションしていく感じになるんじゃないかな。そうそう、Yotta(ヨタ)というアーティストが今、「ステージカー」といって、デコトラの上にステージやミラーボールがあってそこでミュージシャンが演奏できるというものを作ってくれている。そうやって「×音楽」のアート作品が生まれるのもこの芸術祭ならではだよね。

櫻井:すごいですよね。どんな感じなんだろう? デコトラ楽しみだな(笑)。