宮城県石巻市の市街地や自然豊かな牡鹿半島を中心に、7月22日より51日間にわたって開催されるアート・音楽・食の総合祭『Reborn-Art Festival 2017』。3月22日、その開催概要発表会が、代々木VILLAGEにて開かれた。

東日本大震災により約3000人が亡くなる甚大な被害を受けた石巻市。制作委員で思想家・人類学者の中沢新一は、「Artには語源的に『生きる術』という意味がある。途切れてしまった現地の思いを作り直すとともに、豊かな文化を持つ東北の地で、私たちの生きる術を蘇らせたい」と、タイトルの「Reborn-Art」に込めた思いを語った。

アートの分野では、石巻市街地、牡鹿半島の桃浦・荻浜・鮎川の3エリアにおいて、国内外35組のアーティストが作品を展開することを発表。震災後に文化財として認定された「観慶丸」などの建築物も使いつつ、約8割が屋外展示という珍しい構成になる。

キュレーションを務めたワタリウム美術館館長の和多利恵津子は、現地をアーティストと歩く中で生まれた作品傾向として、「自然との対話」「社会問題に対するメッセージ」「追悼」を提示。ルドルフ・シュタイナーや名和晃平、ファブリス・イベール、JR(ジェイ・アール)、宮島達男、Chim↑Pomらを紹介した。

CAP:『インサイドアウト・プロジェクト』、代々木VILLAGE前にて

会見には、参加アーティストの鈴木康広と増田セバスチャンも登場。鈴木は、球がりんごの形のけん玉を使って見事な技を披露した。「けん玉は地球の引力との共同作業。普段は意識しないその力を意識すると上手くいく」とし、『記憶のルーペ』や『牡鹿半島のベンチ』といった出品作も、認識の変更を促す作品だと語る。

CAP:野外インスタレーション『記憶のルーペ』のためのドローイング

一方の増田も、鮎川浜の崖に設置されたブランコに乗って海と対峙する『あっちとこっち』などを出品。「被災した海を眺め、自分がここにいるとはどういうことか、考える機会になれば」と話した。

CAP:『あっちとこっち』の制作風景、鮎川浜にて

会期に先駆けては、レストランやインフォメーションセンターなど総合的な役割を果たす「牡鹿ビレッジ」、会員制宿泊研修施設である「桃浦ビレッジ」がオープン予定。牡鹿ビレッジには全国の有名シェフが参加する「浜のレストラン(仮)」や、地元のお母さんたちによる郷土料理を提供する「浜キッチン(仮)」も誕生。

「牡鹿ビレッジ」内「浜のレストラン(仮)」模型

「桃浦ビレッジ」完成イメージ

「牡鹿ビレッジ」模型

「地域の人々の普段の食の営みに触れてもらいたい」と、フードディレクターの目黒浩敬は話す。発表会の会場では、現地で味わえる浜のお母さんが焼いた牡蠣や、鹿のコンソメスープなどが振る舞われ、『Reborn-Art Festival 2017』の「食」についてもいち早く堪能することができた。

音楽面では、7月28日〜30日、国営みちのく杜の湖畔公園において『Reborn-Art Festival 2017×ap bank fes』を開催。ほかのアーティストに先駆け、Bank Bandの出演が発表された。会場の公園は牡鹿半島からやや離れた宮城県川崎町にあるが、その狙いについて実行委員長の小林武史は、「広い範囲を使うことで、東北全体で行われている総合祭という意識を作りたい」と語る。会場の移動には、巡回バスが便利。その車内用に特別ラジオ番組が制作されるほか、51日間毎日どこかで音楽が鳴っているプログラムなど、フェスだけではない音楽との新しい出会いを楽しめる仕掛けが用意されるという。

このほかにも、ボランティアサポーターの「こじか隊」の募集や、アーティストやスタッフの活動拠点となる「Reborn-Art House」の設置、フェスを通じて学んだ「生きる術」をさらに深めるための取り組み「LOCAL」の実施も発表された。

会見後には、肉体を激しく使うパフォーマンスで知られる参加アーティスト「コンタクトゴンゾ」と小林のスペシャルセッションも披露。小林のピアノ演奏とサンプリングされた声のなかで、コンタクトゴンゾのメンバー三人が身体をぶつけ合い、鑑賞者を惹きつけた。

会見の最後に、「現代は、新しい出会いがなかなか起きにくい時代。ラインナップをただなぞるのとは異なる、新しい音楽や食、アートのあり方を示すことで、鑑賞者の心にグルーヴが起こるようなフェスを目指したい」と語った小林。石巻で初めてとなる大型芸術祭の開催に、期待が高まる発表会となった。

(テキスト:杉原環樹、撮影:関口佳代、編集:矢島由佳子(CINRA.NET))