新しい総合祭『Reborn-Art Festival』が開幕

アート、音楽、食を柱とする新しい総合祭『Reborn-Art Festival』が、いよいよ7月22日からスタートした。9月10日のクロージングまでの51日間にわたって、石巻市街地とその南に広がる牡鹿半島に、日常を変える風景が息づいていく。本記事では、4つに分かれた会場エリアの特色と、そこで見られるアートについて、ダイジェストで紹介していこう。

エリアマップ

石巻の暮らしとアートが絡み合う、石巻市街地中心エリア / 周辺エリア

石巻駅から歩いて見られる「石巻市街地中心エリア」と、そこから少し離れた「石巻市街地周辺エリア」には、東日本大震災の記憶をさまざまなアプローチで巡る作品が数多く展示されている。

たとえば、成人向け映画館として盛えた「日活パール劇場」を会場にしたカオス*ラウンジの『地球をしばらく止めてくれ、ぼくはゆっくり映画をみたい。』は、館内に残されたポルノ映画のポスターをコラージュしたデジタルペインティング(作=梅沢和木)や、廃墟を模したようなCG空間のなかで次々と登場人物に乗り移っていくVR作品(作=山内祥太)が目を引く。

カオス*ラウンジ『地球をしばらく止めてくれ、ぼくはゆっくり映画をみたい。』

旧旅行代理店で写真展示を行う齋藤陽道は、幼い子どもの定まらない心身を指して言われる故事「7歳までは神のうち」から発想し、自分の子どもと、石巻に伝わる鹿信仰を重ね合わせた『神話(石巻にて)』を発表。

齋藤陽道『神話(石巻にて)』

また、路地裏の古い美容室を会場に選んだキュンチョメも、震災発生から7年目を迎えた被災地と、地中で7年間を過ごすセミの生態を結びつけた新作を展示している(インタビュー記事:被災地はどんどん変わっている?石巻滞在中のキュンチョメが語る)。

キュンチョメ作品展示場所 ビューティーサロン・ベル

キュンチョメ『空蝉』

これらの作品を通して、来場者は石巻に継承される土地の性質とこれまでの時間に目を向けることになるが、その過程で気づくのはアートの特異性や楽しさだけではない。震災直後、全国からやって来たボランティアの拠点になっていた食堂のある通り(「ヴォーグ」という美容室が目印)や、みんなが復旧作業の汗を流した銭湯「千人風呂」などが市街地には点在している。

ヴォーグ

旧観慶丸商店。『Reborn-Art Festival』のオフィシャルショップと、七人のアーティストの作品展示場所となっている

街の外からやって来た私たちには、そういった場所が石巻の人々にとってどんな意味を持つのかはすぐにはわからない。だが、アートを巡る散策を重ねることで、じょじょにその輪郭が明らかになっていくはずだ。このエリアに展示された多くの作品は、すぐに忘却されてしまう過去に視線を向け、それが現在とつながっていることを教えてくれる。

名和晃平、ルドルフ・シュタイナー

パープルーム

宮永愛子『海は森からうまれる』

JR『INSIDE OUT』

芸術祭の各会場はリボーンアート・バス(公式シャトルバス)で結ばれているが、もしも特別な「移動」体験をしたいなら、アーティストグループ「目」が制作した『repetition window』に足を向けてほしい。草っ原の奥に立つ小屋を進むと、ちょっと懐かしい日本家屋に通される。

目『repetition window』

あえて内容は伏せるが、気づいたときにはあなたは遠く離れた牡鹿半島中部エリアの桃浦・荻浜の海辺に辿りついているはずだ。約40分程度の時間の余裕をもって、体験に望んでくれたら嬉しい。