Reborn-Art Festival 2017で、
LOCALはみなさんを牡鹿半島の旅へと誘います。
音楽と芸術と食を楽しみ、漁師さんと船に乗り、
半島の自然を体験するだけではありません。
旅を通じて、旅する身体を取りもどす。
そんなスペシャルなツアーです。
旅人を待つのは、自然の触れ方や体験のあり方そのものを更新する
いくつものプログラム。
眼のとどかない海の底。
耳がとらえられない波の音。
一呼吸がめぐりゆく、身体の奥行き。
漁師やダンサーが触れているそんな世界の縁(へり)をそぞろ歩く二日間です。
それは「私」をつくりかえ、あたらしく世界と出会う旅。
生まれ変わるとはこういうこと。
Rebornの旅へ、さあ、ご準備ください。


この夏、Reborn-Art Festival 2017で「LOCAL」が導くツアーが開催されることになった。「Reborn-Art Walk リボーンアート・ウォーク」と名付けられたこのツアーは、いったいどんな旅になるのか? どんな体験ができるのか?

このツアーのナビゲーションを務める成瀬正憲と、プログラムの構築に協力してもらった河本英夫さんに話を伺いました。

 

自分を更新するような体験

--まず、成瀬さんに伺いますが、このツアーを開催するにあたって河本先生にも参加してもらうことになった経緯は?

成瀬 今回のツアーは「Reborn-Art」という言葉にも含まれる「生まれ変わる」ということをひとつの軸に据えて、単なる旅行ではなく、自分が更新されるような体験ができるものにしたかったんです。
10年ほど前に河本先生の著書『哲学、脳をゆさぶる』を拝読しました。様々な角度から「日々あらたに生まれ変わること」について書かれていて大変興味深く感じていたんです。そこでぜひ今回は、河本先生と一緒にツアーのプログラムを考えたいと思い、声をかけさせて頂きました。

河本 Reborn-Art Festival やこのツアーのコンセプトをきいて、5年や10年後、参加した人に「あ、あのツアーに参加したことが今の私に影響しているな」と思ってもらえるようなツアーにしたい、そういう経験をできるプログラムを作りたいと考えたんです。身体の中に履歴として残っていくような「体験」をしてもらうということですね。

成瀬 そこで今回は身体ワークショップや、体感できる空間インスタレーション、土地の漁師さんとの交流など、さまざまな「体験」のプログラムを河本先生と相談しながら組み立てていきました。

河本 僕がいつも抱えている課題がありましてね。それは、自分が考えてきたことや、積み上げてきた言葉や経験を、どうやって捨てていくかということなんです。そういうものを捨てずに同じ自分のまま前に進んでもずっと延長線上をいくだけ。新しい自分を得るためにはどこかで“リセット”が必要なんです。
でも、持っているものを捨てるというのはけっこう難しいんですよ。ではどうするかというと、別の経験をしたときに自ずと忘れられるもの、それはもう捨ててよいものとする。別の経験をしたけれど残るもの。それは自分も気づいていなかったけれど、自分にとって大切なものなんだろうとする。そう考えると自ずと捨てるべきものが分かって、自分がリセットされて、未知の自分が拓かれていくことになるんですね。

成瀬 今回はその「別の経験」というものに、様々な角度からアプローチしようとしているプログラムになっているんです。

河本 そう。反応は個人によって分かれると思うんですね。身体ワークショップはピンとこなかったけどインスタレーションは感じるものがあったなとか、その逆とか。みんなが一つの聖地を目指す巡礼の旅とは違う、すごくパーソナルな体験になっていくと思いますよ。

 

あたらしい世界を拓く

--プログラムの内容は、具体的にはどんなものがあるのでしょうか?

成瀬 身体ワークショップは舞踏家の向雲太郎さんに講師となってもらい、2日間のツアーの始まりと、中間、そして最後に、身体を通して様々なものを感じ取れるようなプログラムになっています。例えば、呼吸が体をめぐっていくことを細やかに意識すると、脇の方で聞こえていた川の音や鳥の声があざやかに聴こえてきたり、外の世界との接し方まで少し違ってきたりする気がします[AをするとBができるというとオカルトっぽくなるので(決定論)、結果としてそのようになりうる、という言い方をしたいです]。自分の身体と向き合って、内側から“感じ取り方”を変えていくような経験になるんじゃないかと思います。
美術家の大崎晴地さんによるインスタレーションでは、「非可聴域の音」を感じる体験をしてもらいます。音には、普段、人の耳では聞き取れない非可聴域というものがあって、それは振動として感じられるものなんですね。インスタレーションを通じて、その振動を。

河本 この“振動を感じ取る”というのは、普段、ライブで音楽を聴くときなどもできるはずのことなんだけど、大抵うまく受け止められていない人が多いんですね。身体ワークショップで向き合おうとしている“自分の身体”の感じ方もそう。いろんな騒音に取り囲まれながら、慌てて階段を駆け上がって会社に向かったりしている日常の中で、そういう非可聴域の振動や自分の身体のことをあまり敏感に感じ取らないように、我々は無意識に抑制しているんです。それを呼び覚ますのはなかなか大変です。
じゃあこのワークショップを東京でやればいいのかというと、それもまた違うんです。場所の力を借りるということ、普段は気づかないようなことに気づかせてくれる場所、“場所の喚起力”を持つところに身を置くということも大切なんですね。

--“場所の喚起力”とは?

河本 ある場所に行くとすっと風を感じたり、気持ちがざわっとしたりするようなことがあるでしょう。神社の一宮があるところなんかは大抵そういう場所なんだけれども、ある種の霊感というか、人を喚起させる力を持つ場所というのがあります。この牡鹿半島にも強い“場所の喚起力”があると思います。まずはあの場所に行くだけでもう、少し日常とは違う感覚になるでしょう。
そういう場所に身をおいて、回復、あるいは取り戻していきたいものが3つあります。1つめは「触覚」。視覚情報が溢れている時代ですから「触覚」は使われなくなってきている。それをどうやって回復させていくか。2つめは「身体」。自分自身の身体をどうやって感じ取るか、あるいは感じ取り直すか。そして3つめが「踏み出し」。次の一歩の踏み出しをどうするかということ。踏み出すところまでいかなくても、踏み出す方向が見えればいいんです。
「触覚」「身体」「踏み出し」。この3つの行為から様々な経験をして、自分をリセットしながら生まれ変わらせていくようなプログラムの設定を、成瀬くんと一緒に考えたわけです。

成瀬 これだけのプログラムを準備しておけば、ツアーが終わったときに、どこか新しくなった自分に出会える、新しい世界の感じ取り方ができるようになっているだろう、と。

河本 たとえば普段コンサートに行っている人が、このツアーを体験したあとにまた同じようなコンサートに行ったら、それまでとは音の聴こえ方が全く違うものになっている、というような。そんな体験になるんじゃないかと思っているんです。

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次回vol.2では、実際にツアーのプログラムに参加してくれる美術家の大崎晴地さん、舞踏家の向雲太郎さんと成瀬さんの対談を掲載予定。ツアーでどんなことが行われるのか、さらに詳しいお話を伺います!

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「Reborn-Art Walk リボーンアート・ウォーク」
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