Reborn-Art Festival 2017が始まって2週間となります。
Reborn-Art Festival(RAF)の拠点の一つである牡鹿ビレッジが、そもそもどんな発想をもって生まれ出来上がってきたのかを事務局スタッフがレポートします。

牡鹿ビレッジとは、牡鹿半島の中腹にある荻浜(おぎのはま)を中心としたエリアにRAFにとっての牡鹿半島の中心的な場作りとして構想されました。全体図で見るこのような感じになります(隣の小積浜には鹿の解体処理加工施設もあります)。

この荻浜は牡蠣の養殖業の浜ですが、震災で大きな被害を受けました。浜に入る県道沿いには仮設住宅があり、そこに住む人や、一時的に市内に住んでいる方が通いながら、今もこの浜で牡蠣の養殖業を続けています。高台に新しい家も出来てきました。また、浜の山側には羽山姫神社や、石川啄木の歌碑、牡蠣の養殖法を考案した宮城新昌さんの石碑もあります。

 RAFの構想が始まった頃、震災後この浜に戻って来て漁師を始めた純さん(=豊島純さん)に浜を案内してもらった時に、岬の先にある灯台まで続いている小道を教えてもらいました。県道から、牡蠣剥き場、そして灯台まで繋がっている道を歩きながら、海で採った魚をそのままその場で食べられるようなことができたら良いなという話をしていました。そんな話からヒントを得て、このエリアの全体像が見えて来ました。

牡鹿ビレッジの県道沿いエリアには、芝生の広場と多目的トイレ、そして「はまさいさい」という食堂があります。荻浜で生まれ育ったみゆきさん(=江刺みゆきさん)とお話している時に、「牡鹿半島にRAFがきてくれるなら、自分たちも食のことで何か協力したい」という想いを聞いたことがきっかけで始まったものです。「はまさいさい」は、「浜のおかあさん」たちと一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンとの共同運営の食堂です。牡鹿ビレッジには、かわいらしい形のトイレもできます。浜の人たちが恒久的に使える公共のトイレがあった方が良いと提案し、石巻市とも話し合いを行い作ることになりました。このトイレも、他の建物も、牡鹿ビレッジの広場のつくりもそうなのですが、浜の風や音が感じられるような、気持ち良く、しかもアート感溢れる広場となっています。

 県道を海の方に渡ると「湾ショップ」があります。ここには以前「さいとう商店」という雑貨屋さんがありました。震災で被災してしまったのですが、「湾ショップ」という名前で、お店が引き継がれています。この「湾ショップ」は牡鹿半島で活動する若者たちによって支えられていて、今もお店にはお昼ご飯を買いにくる工事作業の方々や、地元の漁師さんが休憩をしたり、世間話をしに立ち寄ったりしています。

県道から海を見ると、左手の方には防潮堤が見えて来ます。これに関しては、いろいろな意見や想いがありますが、是非みなさんそれぞれに感じていただければと思います。防潮堤の工事をされている方々は、RAFの開催日に会わせた工事箇所の調整などもやってくださいました。そして、ここからさらに10分ほど歩いていくと、牡鹿ビレッジの象徴的な場所に通じます。そこに行くまでに、漁師さんの船や牡蠣剥き工場など、いわば浜の日常の営みを目にしながら、進んで行くことになります。RAF実行委員長の小林(武史)は「牡鹿ビレッジは広範囲に、食やアート、色々な人が集まる場が混ざっている場所。その地域の食材を味わえたり、海とともにある生活を地域の方の姿を通して知ることができる。そういった地域の方や自然との出会いもこの循環の中に含まれていて、そういった土地の魅力や人の想いを、お客さんが実際にそこを通りながら感じてもらいたい」と常々言っています。

牡蠣剥き場の横を通って、浜の作業場のエリアを通り過ぎると、軽トラが1台通れるくらいの小さな道が海沿いにあります。10分くらい、散歩感覚で歩いていく途中にはブルース・ナウマンの音の作品も登場します。さわひらきさん、宮永愛子さんの作品が展示される洞窟も見えてきます。そして、このRAFの象徴ともいえる白いビーチにたどり着きます。ここには、RAFに賛同してくれるスーパーシェフ達が集まってくれて、料理を繰り広げてくれる「Reborn-Art DINING」があります。そしてその傍らには、このRAFのメインビジュアルにもなっている名和晃平さんの作品「White Deer(Oshika)」が出現します。この鹿は西南の方向を見つめています。

素晴らしい空間となった牡鹿ビレッジ。ここ全体の設計・建築を手がけてくれているのは、藤原徹平氏率いる「フジワラボ」の皆さんです。フジワラボは、牡鹿ビレッジのみならず、RAF2017全体の設計・建築を手がけてくれています。

先日、私たちが夜遅くまで市内にある事務局でミーティングをしていたら、JFみやぎ石巻地区支所運営委員長の伏見さんがふらっと立寄られました。その時に話してくれたことは、名和さんの鹿が浜に立ち、伏見さんが牡蠣の養殖の仕事で、荻浜の湾に船で出ると、海からも鹿がバッチリと見えるようになった。毎日見てきた荻浜の風景に、白い鹿が実際に加わるようになり、伏見さんはRAFが本当に始まるんだ、と思うようになったとのことことでした。対岸の牧浜などの東浜エリアの方々からも、「鹿が建ったね」と言われることが多くなりました。対岸からも鹿のシルエットがはっきりと見えますが、天気によって様々な表情の鹿に見えるそうです。伏見さんは「船に乗るのは気持ちがよいし、そこから見る鹿もとても良い。昔は牡鹿半島の各浜から移動船が出ていて、牡鹿半島からは、船を使って石巻の中瀬などに行っていたこともあるので、それを復活させるようなイメージで、荻浜の漁港から船を出し、お客さんにも海から見える鹿を見せてあげたい」とも言っていました。

いつも色々な所でサポートしてくれている牡鹿半島の方々がRAF 2017の開催を本当に楽しみにしてくれたり、お客さんをもてなすようなアイディアを出してくれたりして、どんどん新しいことがRAF2017に追加されていくような感じがして、とても嬉しくなりました。船が本当に荻浜から出るのかはまだわかりませんし、「Reborn-Art Festival」はこれからが本番。その中で牡鹿ビレッジがどのような場所になっていくのかは、こうやって地域の人たちの声と一緒に、こうあったら良いな、という姿を見つけていきたいと思っています。